ROAD TO DEBUT
遠くて近い! 近くて遠い！
先輩アーティストに聞いたデビューへの道のり
近藤晃央の巻
詞、声、メロディにその独特の世界を持ち、様々な才能を各方面に伸ばして活躍する愛知県出身のシンガーソングライター＆グラフィックデザイナー。2012 年9 月 シングル「フルール」でメジャーデビュー。2013年6 月 には1st アルバム『ゆえん』をリリース。2016年には、4 月に2nd アルバム『アイリー』を、11月には7thシングル「涙腺/クリスマスチキン（feat.ダイスケ）をリリースして多くのファンを魅了し続けている。待望のフルバンドでのワンマンライブ、近藤晃央ONE MAN LIVE 2017「分泌音」の名古屋公演（＠ElectricLadyLand）が1月27日（金）に、東京公演（＠Shibuya WWWX）が1月29日（日）に開催される。アーティストとしては稀有な裏方体験なども含めて、デビューまでの道のりや歌うこと、創作活動についてのインタビューを4回に分けて連載します。それでは第2回スタートです！
第2回 やりたいことと向いていることが一致していないことに気付いていない!?
－バンド活動のほかにも、ライブハウスなどでのお仕事経験もあると聞いていますが、どんな仕事をしていたのですか？
☆ 近藤 自分のバンドが出ていた地元の名古屋のライブハウスでアルバイトするようになったことをきっかけにして、16歳頃から4､5年ぐらい、裏方的なほうにまわるようになりました。昔から、仕切り屋みたいな性分だったので、イベントブッキングやアーティストのオファーをしたり、みんなの音楽活動を支えるような仕事をしていました。アルバイトとはいっても、やることは社員と変わらない感じです。自分は背も大きくでかくて、見た目も16歳には見えなかったので、地元バンドの育成ということで、ライブ後にメンバーといっしょに反省会を催して、ライブコメントや音や演出についての指摘をしたり、10代の若いバンドのアドバイザーのようなこともしていました。
－どんなアドバイスをしていましたか？
☆近藤 やりたいことと向いているものが違っている印象を多く受けました。例えば、ボーカリストについて言えば、その人のその声だったらメロディアスなものが合っているのに、でもその人は、どうしてもシャウト的なものがやりたいと思っている。そんなふうに、合っているものとやりたいことが一致しないことが多いと感じました。そう言うと、偉そうに聞こえてしまいますが、少し引いて冷静に見ていると、自分に相応しいものがわかっていないように見受けられる人はけっこう多かったように思います。声質というのは多少の変化はあっても、絶対的に変えられないものでもあるので、自分の声に向いている音楽を選ぶことや曲づくりをすることは大切なことだと感じていました。わかりやすい例で言えば、キーについてのとらえ方です。カバー曲を歌うときに、必ずしも原曲のキーで歌うことが良いとは限らないですし、その人に合っているキーで歌ったほうが説得力が増すはずです。高いと思うなら低くして、低いと思うなら高くする。カラオケならすぐできることだし、自分で演奏するときでも、キーを変えることはそれほど難しいことではないはずです。
－無理なことはしないほうがいいということでしょうか？
☆近藤 出せなかった音が出せるようになることもあるので、無闇にハードルを低くすればいいということではないんです。ただ、無理のあるものをやろうとすれば、無理があるように聴こえてしまう。そのときの自分の声に合わせて歌うことを繰り返すことで、逆に低すぎる（高すぎる）なと感じる可能性もあります。そう感じたら、無理なく元に戻すことで、自分の合ったキーを見つけて歌えるはずです。バンドを見ていても同じようなことはありました。バンドが持っている“そのバンドの良さ”が生かされずに、違う方向を向いている。自分や自分たちの声質や音楽のスタイルに合ったものと、やりたいものが一致していないと感じることはよくありました。
－音楽的なアドバイスだけでしたか？
☆近藤 むしろ、音楽的なことよりも、活動自体に対するアドバイスのほうが多かったかもしれません。活動方針的なことについて、何を目標に、いつまでにどうするのかといったことを、メンバーといっしょに考えました。例えば、年末に少し大きめの会場でライブをすることを目標にしたなら、そのキャパで動員達成するためには、何をやる必要があるのか、どういうステップを踏めばいいのかを、いっしょに考えます。出演するライブイベントをどう選んでいくのか、どうやって動員を増やしていくのか、漠然と曖昧にやっていてはなかなか達成できないことなので、助言をすることで活動の姿勢を正してもらうようなサポートをしていました。
－そういった裏方的な仕事から学んだことはありますか？
☆近藤 ライブハウスでの仕事から移って、プロダクションで働くことになり、またさらに仕事の幅が広がりました。様々なアーティストの活動により深く関わることが多くなって、アーティストというのは、自分だけではなくまわりを含めてチームでつくりあげていくものもたくさんあって、自分たちだけでやること以外に人を巻き込んでいく力があれば、より大きくなれるという実例もそばでたくさん見ることになりましたし、大きな成功にはちゃんとプロセスがあるということも、スタッフとして体験できました。最初から人気があるわけでもなく、ある日突然成功するわけでもなく、小さなところから始まって段階を踏んで変貌して成長していくもので、売れたりファンが増えたりするのには、それなりにちゃんと下地や理由があることを理解できたことは、有意義だったと思います。自分の活動に直接照らし合わせるということではないですが、言葉では言い表しにくい、「これ来そう」とか、「いい感じ」とか、「はまりそう」とか、「みんながひとつになって成功を確信している」といったような兆しや予感をつかむ感覚を学べたのは、そういう仕事をやっていたからこそだと思っています。
（第2回終了）
