ROAD TO DEBUT
遠くて近い! 近くて遠い!デビューへの道のり
先輩アーティストに聞く“あの頃の私がやっていたこと”
Interview:JASMINE
2009年12月、1stシングル「sad to say」にて、レコチョク着うたフル(R)週間ランキング初登場1位など、期待の新人としてデビューを飾ったJASMINE。その後、11枚のシングルとベストアルバム『PURE LOVE BEST』を含め計4枚のアルバムをリリースし、日本におけるR&B系の代表的女性シンガーのひとりとして、多くのファンを魅了し続けている。 そんなJASMINEが、小さい頃から抱いていた“歌手になる夢“を実現させるまでにやっていたこと、自らのゴスペルクワイアの経験から学んだこと、独自につくりあげていった練習法、カラオケ難易度の高いJASMINEの代表曲の攻略法などを語ってくれました! 「もっと思い通りに歌いたい!」ソニトレ受講生のみなさんの、ためになるスペシャルインタビューを全4回に分けてお届けします!
第2回 I LOVE IT ’
-ゴスペルとの出会いについて教えてください
☆13歳の頃、家の近くにあった米軍基地の夏の一般開放日に遊びに行って、ゴスペルクワイア(注1)のライブを初体験しました。飛行機の格納庫にステージを設置して、バンドの音をバックにして、黒人の人たちが大人数で歌って踊っていて、その声が一帯に響きわたっていました。コーラスや歌といったその“音のかたまり”を、もの凄いものに感じたのを覚えています。そこで見たものは、「合唱」という言葉から連想される、みんなできっちり声を合わせて歌うような、それまで自分が抱いていた「合唱」のイメージとはまるで違うもので、ゴスペルクワイアの人たちは、体をのけぞらせたり、天を大げさに仰いだりしながら、体を大きく揺らして、とてもハッピーな雰囲気を全身を使って表現しながら自由に歌っていて、とにかくみんなが笑顔でした。人によって、声の大きさや出し方も異って、音が外れてる人もいましたが、それでも全体が成り立っていて、一団となった声が、押し寄せてくるようでした。それが私にとってとっても衝撃的で、帰り道母に、「ゴスペルをやりたい。私もあの中に入りたい!」と訴えて、すぐに、そのゴスペルクワイアに入門させてもらいました。 母親といっしょに通った教会での練習は、まさに、ひとつの音楽や曲の成り立ちというものを学ぶのに最適なところで、ギター、ドラム、ピアノといったシンプルな楽器編成で演奏される音に合わせて、歌やコーラスが、アルト、テナー、サックス、ソプラノ、とそれぞれのパートに分かれて練習するんです。音楽がわかりやすい状態でそこにあったので、歌を聴きながら、歌いながら、音楽の仕組みを理解していくことができました。どうやって盛り上げるのか、どうしたらよく聞こえるのか、そういうことを体験的に知ることができました。
-ゴスペルで得たものには、ほかにどんなことがありましたか?
☆ゴスペルをやっていてとくに感じたことは、歌の中で、感情表現をすることがとても重要なことだということです。ゴスペルクワイアの人たちは、うまく歌うとか、音を外さないようにとか、歌詞を間違えないでとか、そういうこと以前に、感情表現がとても豊かで、嬉しくても、悲しくても、怒っていても、本気で全身でそれを表現していました。聖歌としての歌詞に対しても、ちゃんと自分の心をそこに置いて歌っていて、生きていることに対してどれだけ愛を提示することができるか、自分がしてきた過ちに対して心からそれを謝る気持ち、生きていることがほんとに嬉しくて神様に感謝する気持ち、そういうことをいつも体いっぱい声いっぱいに思いっきり表現しながら、泣きながら床に倒れ込むようにして歌う、そんな光景が毎週のように繰り広げられるのを見ていたので、自分もだいぶ感化されたところがあったと思います。 そこまで泣き喚くように歌っていたゴスペルクワイアの人たちは、歌い終わってその後のパーティーになると、ゲラゲラ笑いながら、ケーキやドーナッツをおいしそうに食べていて(笑)それを見て、いったいこの人達の心はどうなっているんだと思いましたが、歌うことで浄化されるからこそ、泣いた後に大笑いして美味しいものを食べたりできるんだろうなと、中学生なりにもなんとなくわかってきて、自分をここまでさらけ出して、自分を解放することが大切なことなんだろうなと思いました。少しずつですが、友達とカラオケに行ったときに、いつのまにかみんなよりも感情を開いて表現を大きくして歌っていることに自分でも気がついて、嬉しい曲を椅子の上にあがって飛び跳ねて歌ったり、友達が失恋したときには自分のことのように泣いて歌ったり、そうすると、聴いてくれていた人がより盛り上がってくれたので、ゴスペルが、歌うことの真髄を教えてくれたんだなと思っています。
―ゴスペルをやってから、人前で歌うことが楽しくなったのですか?
☆自分がすごくシャイだという壁をいつも感じていて、なかなかその皮を破れずに悩んでいたんです。そんな悩みを抱えながらも、もっと歌を歌いたいと思っていた中学2年生のある日に、ちょっとしたチャンスが訪れたんです。いつもの歌の練習が終わった後、ゴスペルのリーダー的な人と、ピアノの人と母の3人の前で、歌う機会があって。家族や友達以外の前でひとりで歌うのは初めてで「Oh Happy Day」をとても緊張しながら歌ったんですが、終わったあとにリーダー的な人から「いいわね。今度、あなたソロで歌いなさい」と言ってもらえて、それが人前で歌う第一歩でした。ただ、それからすぐに緊張しなくなったわけではなくて、いつも緊張で倒れそうになりながら、下を向いたり、声が出なくなったり、なかなかうまく歌えずにいました。 自分の理想通りになかなかできない。毎週その連続でした。それでも、失敗と練習を繰り返して、次の週にまたマイクを持って歌って、前より少しだけ自分を解放できるようになって、みんなの前で、前の週より何か一つだけできるようになる。そうやって、ほんとに小さなステップを重ねていったんです。そうして、ある程度自分が何ができるのかを見せられるようになってくると、ちょっと欲が生まれてきて、もっとみんなに凄いって言われたい、ほめられたい、いいねって言われたい、と思うようになって、どんなアーティストみたいに歌えたらかっこいいのか、どんな歌い方がいいのか、研究心がどんどん嵩じていきました。それまでは、音楽を雰囲気みたいなもので選んで聴いていたのですが、“シンガーの歌のうまさ”というような基準でCDを選んで聴くことも多くなりました。それが、マライア・キャリーとか、ホイットニー・ヒューストンとか、メアリー・J. ブライジ、クリスティーナ・アギレラといったシンガーたちで。音楽を、単純に自分の好きなものを聴くという以外に、自分が目指すことのために、学ぶように聴くものが増えていきました。
-ものごとの探究心が強いほうだったのですか? 自分流の探究の方法はありますか?
☆音楽と出会って初めてそうなれました。驚くほど、それまで何にもしない、勉強もしない、遊びも適当で、何かに夢中になれたことがなくて、何かをすごく頑張った記憶がありませんでした。音楽に対しては、自分で意識する間もないほど、無意識のうちに夢中になっていました。好きな曲を見つけると、「みんなが知らないのはもったいない」という想いに溢れて、学校でも、放送委員になって、昼休みに好きな曲を毎日3曲かけて、全校中にHIPHOPを流したりしていました(笑)。探せば探すほどいい曲が見つかって、このままのペースでは「短い人生のなかで、急いで聴いても、いい曲が全部聴き切れない」と本気で焦るような心境にも陥りました。それほど、好きで夢中だったのだと思います。 新しい好きな曲に出会うと、よく眠れなくなってしまうんです。曲がどうなっているのかわからないようなところがあると気になって、秒単位で巻き戻して何回も繰り返し聴いて理解するようにしていました。自分の部屋の机の上には、教科書ではなく、プレーヤーとスピーカーを真ん中に置いて、それに向き合って、まるで勉強しているような姿勢で聴いていました。(笑) 第3回に続く。
(注1) ゴスペルクワイア: アメリカのキリスト教黒人教会の礼拝で歌われる聖歌を歌う聖歌隊(コーラス隊)
SUMMARY
自分の感情を解放することで、真の感情表現ができる!
ゴスペルで知った、歌うことの根本。自分をさらけだして全身で表現する。
人前で歌を歌うことが、次の目標をはっきりさせる!
失敗とその克服の練習の繰り返しで、小さなステップを積み重ねる。
夢中になれることを、とことん突き詰める!
いい曲を求めてどこまでも突き詰める。1秒でもわからないところは、何度でも聴き直す。